この間東京でも雪が降ったと思ったら、あっという間に春一番だそうで…ころころ変わる季節の中、皆様如何お過ごしでしょうか? 中学生の時、古物商の父が手に入れた真剣(同田貫)を持たせて貰い、その信じられない重さにびっくりした浅乃です。刃を真上に向けてティッシュを落としたら、刃に触れた途端スッパリ切れてしまったのを見て心底怖くなりました。「花柳」の登場人物達も、こんな重いモノを振り回していたんですね…。
さて、今回は『幕末恋華・花柳剣士伝』のED曲である『願ひ華』が出来るまでを前回同様ゆるく書いてみます。相変わらず読みづらい上に面白みもない文章が続きますが、どうかご容赦下さい。
「前作のイメージを残しつつ、エンディングらしい曲を」というオーダーだった気がしますが、細かい指示内容が思い出せないんですよね…。キチンと話し合いの時間は持ったハズなんですが、やっぱりいろいろ切羽詰っていたんだと思います。OPがリズムのある前に進む曲なので対照的に緩やかな…所謂「エンディングらしい曲」を作ることなり、OPに予定以上の時間を掛けてしまったので、休む間もなく続けて制作を開始しました。
○ 制作その1~作曲~
この段階ではOPの作曲が終了しているだけで、作詞も何も一切手付かずだったので結構焦りまくりで作業開始。この先に残っている作詞作業は私にとって最も不得意な分野で、いつも余計に時間が掛かることは確定しています。なので当たり前ですが睡眠時間を削りながら鍵盤にかじりついていました。記憶が曖昧ですが、OPとは違いAメロからサビに向けてメロを作っていったと思います。前作曲『恋華ren-ka』との距離感については、OPである程度の目安というか…自分なりの「覚悟」みたいなモノが持てたので、それほど苦痛ではありませんでした。と、いうよりは、もうそんな御託を並べている余裕は無かったというのが適切な表現かもしれません。一音一音を長めにゆったりと…そんな意識を持って制作された初期のデモでは、現在のようにサビが『恋華ren-ka』と同じではありませんでした。
出来上がったデモを聞きながら酷く悩みました。そのなんとも言えない収まりの悪さに何度も頭を抱え原因を考えましたが、結局OP同様「距離感」の問題なんだと実感。何ていうんでしょうか…とても中途半端だったんです、個人的に。思わせぶり…というにはあまりにも色々届いていない気がして、もう一度サビを弄り回した結果「これが最善…」という判断で、『恋華ren-ka』のメロの一部をそのまま使用する事にしました。他の作品では出来ない、最初で最後の一回こっきりの必殺技。正直とても怖い決断であると同時に、変な感覚なのかもしれませんが「あ、3年前の自分に負けた気がする」と妙な敗北感を味わいました。この判断に至る理由は色々ありますが、大きな部分は私のユーザー様への「甘え」なのではないか…と、最近はこんなふうに思う時があります。そして同時に、「幕末恋華のEDはやっぱり『恋華ren-ka』…」という強いイメージを持っているのは、スタッフの誰よりも、作った私自身なのだと…当たり前な事を実感しました。
勿論私なりに真剣に良いと思われる結果を十分考慮した上での判断ですし、間違いでは無かったとも思っています。『恋華ren-ka』のサビの中で一番強い印象とメッセージを持つ一節をそのままの形で加えることで、シリーズとしての統一感やED曲としての収まり具合もこちらが思い描いていたモノになったと思っていますが、サビを弄る前に感じた「不安感」は結局別の形になって、作業を終えた現在も大きな「課題」となって私の中に残っていたりします。そしてこの最善と判断した私のアプローチをどのように捉えどんな感想や評価を頂けるのか…それは聞き手である皆さんそれぞれにお任せしたいと思います。
○ 制作その2~作詞~
サビを『恋華ren-ka』と同じにした事で、ある程度の自分の中の「制限」が解除され作業自体はスムーズに進みました。「これは前に使ったから…」といった発想自体をスッパリ切り捨てて、より効果のある言葉を優先的に当てはめて「近づきすぎちゃいけない!」ではなく、逆に「失礼します…」と寄り添っちゃう感覚でした。ここまできて迷ったり悩んだりすると、余計中途半端なモノになってしまいそうなので…。詞の基本的部分はOPと同様、「死」のイメージを極力排除した超個人視点な哀しい「恋の歌」です。歌いだしの「この声が~」は一番最初に思いついた事もあって個人的にとても気に入っていて、逢えない相手との「距離感」と伝えたい「想い」の両方を、やんわり感じさせてくれる…言い方は興醒めな感じですが、限られたスペースをより有効に効果的に使える「便利で優れた言葉」だと思っています。
「本当に逢いたいときは、心の中…」
皆さんには心から逢いたいと思う人がいますか? そしてその人にすぐに逢えたりしますか? すごく単純なようで実はとても難しい事だったりするこの現実を、私なりに思い浮かべながら書いたのが、この詞です。目に見える力強さは無いけれど、決して途絶えることなく、音もなく振り続ける雪のように…。これまでと同様に、特別な言い回しや表現は使っていない本当にシンプルな歌詞だと思います。ま、私の貧租なボキャブラリーではこれが限界って話もあるんですけどね…(笑)それでも歌にした時を想像しながら、実際に歌いながら、一つ一つ言葉を選んでいきました。サビの最後を締めくくる「恋の華、胸にひとつ」は、OP同様「華」を使用したかった事もあって、収まりも良く綺麗にまとまる言葉を自分なりに考えた結果です。地味かもしれませんが、この一節は結構気に入っていたりします。前回のコメントにも書きましたが、湧き上がるように「上」に向かうOPとは反対に、このEDの詞は「下」に向かっているイメージなんですが、言葉だけを見ても特別それらしい表現は見当たりません。そのあたりは吉野さんの控えめな…囁くような歌い方のお陰でフォロー出来たと思っています。そしてサビにはメロと一緒に『恋華ren-ka』の歌詞も丸ごと配置したことでただ流れて消えてしまわないように、きっちり「楔」が打ち込めたような気がします。
【「『願ひ華』が出来るまで… その2」へ続く】